『人は実感したものを信用する』
豊富な知識と行動力から、「コンピュータ付きブルドーザー」と呼ばれた元主相、
田中角栄氏の言葉です。
日中国交正常化や、道路交通法の全面改正など、様々な実績をもつ氏。
その氏の実績のひとつ、それが『地震保険』です。
今から半世紀前の1964年、新潟で大地震が発生しました。
建物の全半壊が8,600棟、津波と液状化による家屋浸水が15,298棟。
被害建物の数に注目が集まりました。
当時の大蔵大臣であった田中角栄氏は、新潟の生まれ。
自身の故郷の凄惨たる状況を目の当たりにした氏は訴えます。
「地震保険が必要だ!」。
「地震保険に関する法律」が制定された1966年から現在まで、
東日本大震災を始め、阪神淡路大震災や熊本地震など、
幾つもの大震災が日本を襲ってきました。
当コラムでも、耐震や地盤など、
地震に関する記事をいろいろ掲載してきましたが、
その中の「地震保険」について、近年発生した地震事例を基に、
数回に分けてもう少し深く検証していきます。
1回目となる今回は、地震保険の概要として、
地震保険の「必要性」と「目的」を取り上げます。
◎地震保険の必要性
復興庁の発表によると、
2016年7月14日現在の東日本大震災の避難者数は、14万7772人。
地震発生から5年半が経つ今なお、自身の家を持てず、
仮設住宅や知人宅などで、生活を送っています。
住む家を失ってしまったら、地震保険以外に、
生活を支えてくれるものはあるのでしょうか。
3つの「助け」
被災時の生活を支えるものとして、
大きく分けて、3つの「助け」があります。
それは、自助・公助・共助という考え方で捉え、
金銭の面に関して言えば、地震保険も含め、下記のようになります。
自助=個人の備え
貯蓄や地震保険など。
公助=国の支援制度
被災者生活再建支援法による国からの支援金。
家を失った人々に対し、国が最高300万円の給付を行う制度。
共助=義援金
内閣府の発表によると、東日本大震災において、
日本赤十字社等に寄せられた額は、約3,796億円。(2016年7/末現在)
上記のように、自助(個人の備え)だけでなく、こうした公助や共助もまた、
大きな支えとなります。
しかし、公助と共助には、いくつか知っておくべきことがあります。
公助と共助について
①公助=国の支援制度
認定 |
被災者生活再建支援法による給付制度があります。 支給を受ける為には、 「大規模半壊」以上の被害認定を受ける必要があります。 例えば「大規模半壊」に認定された場合、 基礎支援金50万円+加算支援金が最高100万円で、 合計150万円が支給されます。 ところが、「半壊」と認定されると、支給額は0円です。 |
時間 |
上記の認定で納得できない場合、二次調査を依頼することができます。 ところが、結果が出るまでにかなりの時間がかかることがあります。 過去の例では、被害が認定されるまでに、10ヶ月を要したこともあり、 周囲の復旧度合から取り残されてしまう世帯も少なくありません。 |
東日本大震災では、津波による被害が大部分であった為、
航空写真を用いた地域の一斉認定が行われました。
その結果、認定、時間ともに、被災者の負担軽減につながりました。
一方で、今年4月に発生した熊本地震では、
地震による家屋倒壊や傾斜が主だった為、家屋1軒1軒を調査。
結果として、認定や時間に問題を残し、
制度としての有効性を問われる声が多く取り上げられました。
②共助=義援金
義援金は、生活再建の為に間違いなく大きな役割を果たすものです。
しかし、被災者の数が多ければ多いほど、その配分は少なくなることはもちろん、
その配分のスピードにも遅れが出てきます。
首都直下型地震が起きた場合
公助と共助の特徴はご理解いただけましたか?
次に、例として、首都直下型地震が起きた場合を考えてみます。
※内閣府ホームページより出典
上記は、熊本地震と同じM7規模の首都圏直下型地震が起きた際の被害予測です。
建物の被害予測数は、熊本地震の約9倍にも上ります。
支援金や義援金を受け取れるまでの時間や、金額はどうなるのでしょうか。
公助・共助は、そもそもが自助の上乗せとして考えられるもので、
災害規模や地域によって、平等な役割を果たせるものではないのです。
首都圏直下型地震に限らず、各地で大きな地震は予想されています。
こういった考え方からも、
自助=「地震保険」が必要となってくるのではないでしょうか。
◎地震保険の目的
「地震保険なんて大して支払われない」
地震保険を考える上で、多くの方が耳にされる言葉かと思います。
ここでは詳しく説明しませんが、他の損害保険に比べ、
認定方法や支払金額などに制限が多いことが実状です。
しかし、その根底には、保険としての目的に違いがあります。
火災保険を始め、他の損害保険が目的とすることは、
「被災(害)者の生活水準を、事故発生前に戻すこと」。
一方、地震保険の目的は、
「被災者の生活の安定に寄与すること」なのです。
保険の原点には、「一人は万人の為に、万人は一人の為に」という
「公益性」というものがあります。
とりわけ地震保険は、民間保険会社と国が、共同で運営する保険制度です。
保険が提供すべき助け合いの精神を、最も実現できるものが、
地震保険なのかもしれません。
◎まとめ
冒頭の「人は実感したものを信用する」という氏の言葉は、
確かに当然のように受け取れます。
しかし、この言葉の裏を返せば、
「人は実感をしなければ信用しない」ということであり、
ことさら地震保険に関して言えば、
「実感したころには遅い」と言えるかもしれません。
9月1日は、防災の日。
地震に対する備えを再検討されている方も多いと思います。
今回は、地震保険の概要を取り上げましたが、
次回のコラムでは、
地震保険の詳細や、有効な活用方法などをご紹介する予定ですので、
是非、ご参考にして下さい。
埼玉の不動産 ハウス壱番館の島野でした^^